「和室」は極めて汎用性の高い居住空間である。日本の住宅の伝統・文化に支えられてきたこの空間は、時には居間となり、また時には客間としてその機能を果たし、更に夜になると寝室としての機能を発揮してきた。現在のほとんどのマンションがそうであるように、リビングに隣接する空間として位置付けられても、「和室」はリビングを拡大して活用できる空間であり、余暇の空間であり、田舎から両親が上京してきた時などの泊まる空間として、その機能を発揮する。 この「和室」の唯一の欠点をあげるとすれば、ふすまや障子で隔てられているだけの空間であるということ。例えば、4人家族が3LDKの住居(洋室二部屋、和室一部屋)に住んだ場合、将来的に2人の子供がそれぞれ個室として洋室を占拠し、和室が夫婦の部屋、寝室となるのが一般的だが、この和室はたいていリビングと隣接しているので、布団の上げ下げだけでなく常にきちんときれいにしておかなければならない。しかも、リビングやキッチンと隣接しているとなれば、寝静まった後、キッチンに現れた子供の気配に飛び起きたりするようなことにもなりかねない。和室の汎用性は、裏を返せばプライバシーを確保しづらい、「ふすま・障子のプライバシー」なのである。 |